ICT Music Session

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ICTに対する現場教員の声を聞く@(2016.1)

今月と来月は、女性教員の方々の教室環境への不満やICT活用への意欲などについて、教員免許状更新講習の際に書いていただいたレポートをもとに報告します。

この夏、私が勤める京都女子大学で教員免許状更新講習「からだ・電子機器と音楽教育―異なる面からのアプローチ―」がありました。午前の部「からだ」は、乳幼児の音楽教育研究が専門の岡林典子さんが、午後の部「電子機器」は私が担当。女子大での開催のため、受講者 40名(定員)は全員女性で、参加者は 35歳が17名、45歳が15名、55歳が8名、幼稚園教諭が13名、小学校教諭が16名、特別支援学校教諭が5名、保育士が6名でした。

「電子機器」への高い関心

当初、午後の「電子機器」は、午前のついでに仕方なく受講する人が多いのではないかと私は予想していました。実習の巡回指導で訪れた幼稚園や保育園で、PCが事務以外の用途に使われているのを一度も見たことがなかったので、多くの女性教員がICT活用には関心がないという先入観をもっていたからです。

ところが、受講者が講座申込み書類に記入した課題意識や希望を見て、予想が外れました。そこには、「どの子も楽しめる音楽の指導について考えたい」、「新しい指導法や教材開発について知りたい」、「現在取り組んでいる教育実践に新たな手法を取り入れたい」など、「からだ」と「電子機器」に共通する要望が最も多く書かれていましたが、「電子機器」に対する要望を書いた人が12名もいたのです。

「授業における電子機器の効果的な活用について学びたい」、「最新の電子機器を音楽教育にどう生かしていくかを考えたい」、「デジタル音楽教材についての理解を深めたい」、「教育現場への電子機器の取り入れ方を具体的に知りたい」、「現代の電子機器を使って音楽教育の幅を広げたい」、「電子機器が子どもに与える影響について学びたい」、「電子機器の講義は初めてなので、できるだけ吸収したいし、理論も知りたい」……。一方の「からだ」に対しては、「身体表現の楽しさや理論を深めたい」、「音楽教育とからだとの関連性を学んでみたい」など、6名。

前回2009年に担当した際は、「電子音より生音でしょ」、「子どもには自然との触れ合いが大事」といった冷たい視線がありましたが、今回はフロアの雰囲気も一変していました。京阪神地区の音楽関連講習にICT関連のものがなかったせいなのか、教員の皆さんに「電子機器」に習熟しなければならないというプレッシャーがあるのか、その理由は定かではありませんが、大きな変化を実感しました。

教育環境への不満の声

ICTに意欲的な先生が多かったせいか、レポートの中には、音楽室の設備などに対する不満が多く書かれていました。

ひどい事例から順に挙げると、保育園では、「乳幼児に電子音は駄目」という理由で CD教材ですら運動会でしか使えないところが今でもあるらしいです。小学校の音楽室では、CDデッキと電子オルガン、キーボードしかない、音楽室にプロジェクターはなく、古いブラウン管テレビしかない、プロジェクターが古くて満足に映像が映らないのに、音楽室だけデジタルテレビを設置してもらえないといったケース。

次に、音楽室を含む全教室にプロジェクターとスクリーンが導入されたが、職員室に置いてある教員共有のノートPCとLANケーブルを遠くの音楽室まで運び、接続しなければならず、実際にはなかなか活用できないケース。音楽室専用のPCがあれば準備が楽になるのに、設置されていなかったり、個人用のPCを持ち込むことができないケース。また、電子黒板は、音楽の授業では使いづらいという意見もありました。

ネット環境に関しては、音楽室等の特別教室がwi-fiにつながっていない、教室で視聴することができるサイトが制限されていて、動画はほとんど見ることができないことに対し、不満が集中。国語や算数、理科などの科目はデジタル教科書が充実しているのに、音楽ではまだ活用されていないことや、他教科では活用しているのに、音楽となるとCDのみという先生方が多いといった、デジタル教科書に関するコメントも書かれていました。

また、研究授業については、「ICTを意識した授業研究はまだほとんど行われていない」、「市の研究授業でICTを使用した音楽の授業を提案した際、故障やトラブルが怖いという理由で年配の先生方から受け入れてもらえなかった」といった現状報告がありました。
しかし、現状への不満を述べる一方で、「早速ICTに特化した音楽科の校内研究に取り組んでみます」、「電子機器の必要性を学校内の研修でアピールし、計画的に設備が拡充していくように努力したい」、「音楽活動にICTが必要であることを伝えていくことが大事です」といった決意を書いた先生も、何人かいらっしゃいました。

来月号では、それぞれの方のICT活用に関する抱負をまとめることにします。

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