サイトを活用した学習指導案

- 教育情報ナショナルセンターの日本音楽素材を使用した指導案 -
No.1 筝とその音楽に楽しもう―「六段の調べ」から現代邦楽まで―
深見友紀子(協力:竹内有一)

■ 教科書

 日本の楽器の響き 箏曲「六段の調」(教育芸術社2・3上、P39)

■ テーマ

 過去から現在まで、箏を用いた音楽がどのように変遷し、それが現在どのように受け入れられているか、また、西洋の音楽や文化との共通点や相違点、それらから受けた影響等について考える。

■ 留意点

 「六段の調」の詳細については教科書の記述程度で十分であると思われる。それよりも、箏という日本の楽器、あるいはそれを用いた日本音楽の流れや現代性といったことにより広く関心を持つほうが、教育的効果が大きいと思われる。

■1 箏とその音楽に親しむ

 よく知られている楽曲の演奏コンテンツを使って、楽器の音や弾き方、メロディなどを確認し、生徒一人ひとりの箏に対するイメージを確認する。
 箏の音をどこでとういう時に聴いたかよく思い出して述べさせることでイメージを共有する。

◇ コンテンツ1
 mpg【演奏「さくらさくら」(箏)】(和楽器⇒ 弾く楽器⇒ 箏(こと))
 国際的にも有名な『さくらさくら』は筝曲の入門曲です。「咲(さい)た桜」の替え歌で、明治21年(1888)発行の文部省音楽取調掛撰『筝曲集』において、現在の「さくらさくら・・・」の歌詞に改められ『桜』と題されました。[千葉優子](演奏/桜井智永)
◇ コンテンツ2
 mpg【演奏「六段の調べ」(箏)】和楽器⇒ 弾く楽器⇒ 箏(こと)
 八橋検校作曲。中世の寺院雅楽から箏伴奏の歌曲が成立しました。江戸初期の盲人音楽家・八橋検校(やつはしけんぎょう:1614〜85 年、検校は盲人の最高官位)はそれまでの筝曲を改革して今につながる芸術音楽としての筝曲の形を作り上げました。[千葉優子](演奏/桜井智永)
◇ コンテンツ3
 mpg【演奏「春の海」(箏と尺八)】和楽器⇒ 弾く楽器⇒ 箏(こと)
 宮城道雄作曲。代表的な流派に生田流と山田流があり、生田流の宮城道雄(1894〜1956)は西洋音楽の要素を導入し、箏と尺八の二重奏曲『春の海』(昭和4年、1929)など現代邦楽への橋渡しとなる新しい筝曲を作りました。[千葉優子](箏/桜井智永、尺八/加藤秀和)

■2 箏の特徴を探る

 楽器の基本的な仕組みや調弦の仕方を概観し、箏ならではの演奏法(コンテンツ3)にも着目する。弦の数や材質等は、クイズ形式で提供する。
 最後に教科書の記述を参考にしながら、CDまたはビデオで「六段の調」を鑑賞する。

◇ コンテンツ1
 jpg【楽器箏(こと)のかたち】(和楽器⇒ 弾く楽器⇒ 箏(こと))
 箏(こと)は、桐材のかまぼこ型をした長い胴の上に13本の弦を張った弦楽器で、長さはいろいろありますが、154〜194cm くらいのものが一般的です。元来は、奈良時代に中国から伝来した雅楽で用いられた楽器です。[千葉優子]
◇ コンテンツ2
 mpg【楽器箏の調弦の仕方】(和楽器⇒ 弾く楽器⇒ 箏(こと))
 各弦に柱(じ、箏柱「ことじ」とも言う)を立てて、その位置の調節によって音高を定め、右手の親指・人差指・中指にはめた爪(箏爪)で弾きます。爪は生田流の角爪や山田流の丸爪など流派によって異なります。[千葉優子]【説明静止画:爪と柱】
◇ コンテンツ3
 mpg【演奏箏のさまざまな奏法】(和楽器⇒ 弾く楽器⇒ 箏(こと))
 右手親指の爪で奏者の手前から向こうへ弦を弾く形が最も基本的で、次に人差し指と中指の爪で奏者の向こうから手前に向けて弾く形を多く使います。[千葉優子](演奏/桜井智永)
◇ コンテンツ4
 jpg【楽器箏の調弦譜】和楽器⇒ 弾く楽器⇒ 箏(こと)
 箏は弦の下の箏柱(ことじ)を動かすことで調弦します。柱(じ)の位置により弦の振動する部分の長さを変えて音高を変化させているのです。近年では絹に替わり、合成繊維の弦も多く使われるようになりました。
◇ CD またはビデオ「六段の調べ」
 (教科書会社制作等の市販品を利用)

■3 箏と近現代

 再度「春の海」を提示し、その作曲年代を、クイズ等をつかって生徒に認識させる。古典的なイメージの定着しているこの曲が実は昭和初期の作品であることを再確認し、同時代の西洋音楽や日本文学との比較、社会情勢等も視野に入れる。
 その他の近現代の演奏コンテンツを紹介しながら、新しい創作・演奏の場が継続的に生み出されていることを理解し、日本および西洋の古典音楽と、現代邦楽との比較を行ったり、その共通点と相違点を洗い出したり、音楽や文化における伝統とは何か、時代を経て変わるものと変わらないもの等をテーマに意見交換する。

◇ 比較や議論の視点例
・ 「春の海」をピアノやバイオリンで弾いたらどうなるか? →作曲者自身もバイオリン編曲をしている。ピアノ譜も出ているので、教室のピアノ等で演奏も可能。
・ 箏曲の「段もの」と西洋の変奏曲との比較。
・ コンテンツ3・4と西洋オーケストラとの音楽的な類似点の比較。リズム、和声感、指揮者など。
・ 同上の音楽面以外の比較。演奏者の着衣が聴き手に与えるイメージは? クラシック、ポピュラーなど、さまざまな分野との比較検討が可能。
◇ コンテンツ1
 mpg【演奏「春の海」(箏と尺八)】和楽器⇒ 弾く楽器⇒ 箏(こと)
◇ コンテンツ2
 mpg【演奏「瀬音」(箏と十七弦)】和楽器⇒ 弾く楽器⇒ 箏(こと)
 宮城道雄作曲。近年、新しい創作のために弦数を増した多弦箏が開発されています。宮城道雄は大正10年(1921)に低音用の箏として十七弦を発表しました。[千葉優子](箏/桜井智永、十七弦/久本桂子)
◇ コンテンツ3
 mpg【演奏「組曲・人形風土記〜ニポポ」】(和楽器⇒ 芸能と楽器⇒ 新しい音楽の試み)
 (作曲/長澤勝俊、指揮/田村拓男、演奏/日本音楽集団)伝統的な和楽器の演奏では指揮者がいませんが、新しい楽曲の演奏には指揮者が参加する場合があります。新しい楽曲は西洋音楽の五線譜を使って作曲・演奏されることもあります。
◇ コンテンツ4
 mpg【演奏「子供のための組曲〜第五章」】(和楽器⇒ 芸能と楽器⇒ 新しい音楽の試み)
 (作曲/長澤勝俊、指揮/田村拓男、演奏/日本音楽集団)新しい和楽器の楽曲には、伝統的な和楽器だけを用いるもの、改造した楽器を使うもの、他の国々の楽器との合奏やオーケストラへの参加など、さまざまなかたちがあります。

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