満員御礼!

児童学科特別クリスマス講座(クリスマスコンサート)

たくさんの本学学生さん、松田昌さん、野村誠さんのファンの方々のご来場ありがとうございました。



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鍵盤ハーモニカを演奏する野村誠さん

2台ピアノで一人連弾 野村誠さん

エレクトーンを演奏する松田昌さん

松田さん持参のサンタ人形を使って

鍵ハとエレクトーンとのアンサンブル

共演を終え握手する松田さん・野村さん



パンフレット

日時
平成16年12月19日14:00〜16:00
講題
松田昌・野村誠と楽しむ音楽の世界
出演

松田昌(エレクトーンプレーヤー)http://www.masa-mp.com/top.html
野村誠(作曲家)http://www7a.biglobe.ne.jp/ ̄nomu104/

ナビゲーター 深見友紀子(京都女子大学教授)
会場

京都女子大学 音楽棟演奏ホール

- 野村誠さんのページ(日記)でクリスマス講座が取り上げられました。(以下に転載します)

2004年12月19日(日)

ベートーヴェン、一緒にいたい

今日は、京都女子大学で松田昌さんとのデュオコンサート。松田昌さんは、鍵ハモナイトで知り合った鍵ハモ奏者だが、実はエレクトーン奏者/作曲家で、現在は名古屋音大教授で、中学生の時に
「ぼくベートーヴェンになる!」
と言って、ピアノを始め、様々な音楽活動を経て、近々路上演奏デビューを目論んでいる人。

コンサートの始まりは、鍵ハモでベートーヴェンの第9のメロディーを吹きながら、自転車に乗るのを、昌さん、ぼく、の二人で交互にやった。
「ベートーヴェンになる!」
って宣言した中学生は、今50代になって、首から鍵ハモを下げて、自転車に乗りながら、ベートーヴェンを吹いている。コンサートの始まりで、かなりくだけた雰囲気になった。

それから、鍵ハモソロコーナー。昌さんの頭でゾウさんを吹くのから始まって、鍵ハモソロ曲「バス旅行」。この「バス旅行」は、最初の主題が印象的なメロディーで、耳に残る。本格的な鍵ハモ独奏曲で、音楽的に展開していたら、途中からは、バスのクラクションの音や、救急車の音、葬送行進曲など、常套句的な表現が続く具象的な音楽になる。ベートーヴェンのような執拗なテーマの展開とか、感情の高ぶりのようなものは少ない。松田昌は、ベートーヴェンとは別のタイプの音楽家になったようだ。

で、ぼくはちょっと松田昌がベートーヴェンになったら、どんな風にテーマを展開させていくのだろう?と想像してみた。最初の素晴らしく牧歌的な脳天気メロディーをベートーヴェン的に展開させたら?考えてみると、ちょっと楽しい。

そして、ぼくはココで鍵ハモソロの即興もするつもりだったけど、時間の都合やプログラムの流れから割愛してしまおうと考えて、「サザエさん」だけ演奏する。あと児童学科特別講座なので、幼児音遊びネタ(鍵ハモ「カンガルー奏法」、「トラが出た」の二つ)の紹介をした。

その後、「七つの子」を鍵ハモ+エレクトーンでやった。
か〜ら〜す、なぜなくの?
この曲のエレクトーンの伴奏は非常にあたたかく、生楽器としてのエレクトーンの魅力が存分に発揮されていた。ぼくは鍵ハモを吹きながら、自分の曲でもなければ、自分のアレンジでもない童謡の譜面をどう演奏しようか、覚悟を決めさせられる。やっぱり、お客さんに向かって、きちんと語りかけれる演奏をしなくっちゃな、と心の片隅で思いながら、1年前の12月のこの時期、この大学の先生を辞めることになって、最後の授業をしていた頃のことを少し思い出した。

1年前の12月、
「ピアノで、****を弾いてよ。」
って言われて、ぼくはポップスのピアノ譜を初見で弾いていた。わざわざ最後の授業の時に、自分の曲でも、得意な曲でもない楽譜の初見なんかして、しかも、意外に厄介な譜面で何だか思うように弾けない。この学生たちと一緒に過ごせる最後の授業で、こんな演奏してちゃダメだよな、なんとかしなくっちゃ、と心の中でツッコミを入れて、必死に演奏。かなりボロボロなんだけど、どんどん前に出る演奏になった。ぼくは伝えたいし、伝えなきゃだし、と思って弾いていた。そしたら、演奏が終わった後に、学生の一人(里美)が、
「今、演奏してた時、何考えてたの?」
って聞いてきた。うわっ、鋭い質問するなぁ、って思った。どっちが先生だか、分からないよ。ぼくは正直に答えた。
「私、音楽のこととか、よく分からないけどね、でも、先生の音はすごく心にくるよ。だから、なんでかなって思って聞いたんだ。」
最後の授業で教えられたのは、ぼくの方だった。

そんな気持ちを大切にしながら、「七つの子」を演奏した。そしたら、客席から子どもの声がした。何かを叫んだのか泣いたのか?さっぱり分からないけど、その声をきっかけに、ぼくはカラスの「カー」という声を出してみたりした。

その後、昌さんのエレクトーンソロ曲を3曲続けて聴いた。

ここで休憩を入れることにする。コンサート前半は、非常にいい流れで来たと思う。学生と話をしたら、
「来て良かった。」
と言ってくれたので、よし。

休憩中に、児童学科3回生(このみ&智美)から、15日に自主企画でやったらしい児童学科運動会の写真を見せてもらい、多分すっご〜く楽しかったんだろうな、ってことが分かって、こっちまで嬉しくなる。

さて、コンサート後半の1曲目。お客さんとじゃんけんをして、最後まで勝ち続けた人の名前と好きな食べ物のイントネーションを主題にした即興演奏をした。これは、昌さんがよくやる方法らしい。「好きな食べ物」をインタビューしている時、
「おしぼり!」
と言う子どもがいて、おしぼりを食べるのか、と驚いた。
ところが、この即興、非常によくまとまった楽曲に仕上がるのだが、逆に言うと、ちょっとまとまりすぎたかな、とも反省。テーマが二つもあると、そのテーマに固執しすぎてしまったか?

で、もっと違うのをしてみたいな、と思って、もう1曲やってみた。最初に、わざとコード感などなくして始めたが、やはりテーマの呪縛は強く、そこそこまとまってしまう。でも、お客さんにも十分楽しんでもらえたとは思うけど、、、。

このコーナーは、名前で即興演奏するというエンターテインメントとしては、十分成立している。しかし、二つの主題を使って、なんとなく曲をまとめていては、いけなかったのだ!今日の共演相手は、中学生の時に、
「ぼくベートーヴェンになる!」
と大真面目に言って、ピアノを始めた松田昌さんだ。ぼくは、ここで大真面目にベートーヴェンにならなければいけなかったのだ。そのことに気づいたのは、コンサートの後だった。ここは、ちょっと反省&心残り。次のチャンスがあれば、ベートーヴェンになって、もっと展開の妙技を連発し、感情を高めていかねばいけない。

次は昌さんのレパートリーのクリスマスメドレー。これは子ども向けに考えたものらしく、途中、リズム遊びのコーナーがあり、昌さんのホイッスルのリズムをみんなで手拍子で真似る、というもの。最初は楽しいけど、なんだかこれに別の要素が加えたくなって、ぼくなりにこのコーナーに味付けをすべき、とステージ上で直感で思った。
その場でいきなり、指揮を交替。
変なジェスチャーとか、いろいろやって
「えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、クリクリクリクリ、クリスマス!」
っていう意味不明の言葉が出てきた。

そこから、また曲はコーダに進んでいったのだが、演奏が終わってから、
「えらいやっちゃ、ってどういうことなんだろう?」
と客席に向かって問いかけたら、客席の子どもが、
「天国のクリスマス」
とか、サンタさんがクリスマスの準備で大変とか、サンタさんが天国でもプレゼント配ったら、プレゼントがなくなる、とか、色んなことを言い出してくれて、一気に曲のイメージが、世界が膨らんだ。それが、嬉しかった。

そして、最後に、しょうぎ作曲で作った「誕生」。これは、初めてきちんと通して演奏した。昌さんが色々頑張っている姿が印象的だった。誕生。今日のコンサートで、ぼくと昌さんの間には、何が誕生したのだろう?ぼくと深見さん(京都女子大学教授)の間には、何が誕生したのだろう?ぼくと京都女子大学の学生の間には、何が誕生したのだろう?

終わった後、ベートーヴェンについて、考えた。ベートーヴェンっていう作曲家は、いわゆるカッチリした様式の古典派音楽のルールから、どうやって自由になっていくか、を追求し続けた作曲家、とぼくは理解している。どんどん作曲のスタイルが変わっていくし、年をとればとるほど、どんどん感情が露になってくる。そして、晩年の作品でも、作曲が上手だな、とか、センスがいいな、という印象を全く持たせないくらい、なんだか未完成であり続けた、未完成+現在進行形の作曲家だ。松田昌さんは、
中学生の時に
「ぼくは、ベートーヴェンになる!」
と言って、音楽を始め、
「夢をおいかけて〜目指せ日本のベートーヴェン」
という著書を50歳になる直前に書いた人だ。その本のあとがきには、夢が列挙してある(以下、同著より抜粋)。
「これぞエレクトーン、という演奏法を開発したい!」
「もっと多くの人に愛される曲を作りたい!」
「オペラやミュージカルの作曲をしたい!」
「エレクトーンとオーケストラのためにも作曲したい!」
「60歳までにはあジャズ・ピアニストとしてデビューしたい!」
「死ぬまでに、キース・ジャレットのようなすべて即興のコンサートを1回はしたい!」

今回は、昌さんとの最初のコンサートでお互いの自己紹介だった。もし、2回目以降のコンサートが実現することがあれば、この夢のどれかを実現することを大前提に、コンサートの準備をし、ぼく自身もベートーヴェンになってしまう気持ちで臨みたい、と思った。

終演後、色んな歓談のあった後、京都女子大の学生、コンサートを聴きに来ていた相愛大学の学生たちと、ケーキを食べるためのプラスチックスプーンを、弾いたりして、
口に共鳴させたり、一斉に落としたり、不思議なオブジェを作ったりして、遊び続け
た。たった一つのもので、1時間以上遊び続けた。

その後、ポチとの卒論の相談。帰り道に喋りながら、
「要するに、ぼくが授業していた時に、伝えたいこととか、教えたいことなんか、実は何もないんだ。ぼくは、みんなのことが好きで、ただ一緒にいれれば、それだけでいいんだ。」
と驚きの発言をした。好きな人たちと一緒に時間を過ごす。昌さんとリハーサル中に雑談したり、即興したりするのも、そう。終演後に、京都女子大のゼミ生たちとお菓子を食べているうちに、新しい遊びが生まれてしまうのも、そう。何かを作るのを目的にしてるのではなく、「一緒にいる」ってことをしているだけだ。そして、「一緒にいる」仲間たちは、些細なことにすっごく感激したりしてくれて、そこから遊びに発展したり、曲が生まれたりする。昌さんとは、今度、いつ一緒にいることになるかな?