月刊ミュージックトレード(ミュージックトレード社)に連載した
コラムのバックナンバー

2002年11月
日韓コンピュータ音楽教育関係者が集う - その2
深見友紀子(Yukiko FUKAMI)

 先月号では、韓国の音楽教師たちの日本研修旅行(八月二十一日〜二十四日)のうち、初日の芝学園高等学校での研修をレポートしたが、今月は二日目と三日目の模様を報告することにしよう。

 二日目の八月二十二日、韓国の音楽教育の研究会KCME(the Korea Society of Computer Music Education )の一行は新幹線で関西に向かい、午後、京都の名所巡りをした後、交流会「日本の情報・メディア教育の概観紹介」に参加した(ぱ・る・るプラザ京都)。講師は田中博之さん(大阪教育大学助教授)、坂本暁美さん(大阪教育大学講師)ら。

 インターネットを使った学校間国際交流研究の第一人者である田中さんは、日本の学校教育の情報化計画や今年度から本格的に実施されている「総合的な学習の時間」、異文化間コミュニケーションに必要な手段などについて説明した。また、音楽活動を中核とした実践例として、大阪教育大附属池田中学校とホーリークロス・コンベント・スクール(イギリス)との交流「歌舞伎プロジェクト」を紹介した。(このプロジェクトの解説には、実践者である同中学校教諭、田中龍三さんが加わった。)

 田中博之さんが目指すのは、世界中に友だちを作ろう(Let's make friends inthe world)というスローガンのもと、文化の差、国境を越えた子どもたち同士のネットワーク、相互理解(Cross cultural Exchange of Information Collaboration and Understanding)である。

 ダンナ様がハワイ出身の日系二世で、自身もハワイ大学で勉強した経歴をもつ坂本さんは、彼女が企画したハワイと大阪の小学校との音楽交流を紹介。音楽を作って発表するだけではなく、互いにアドバイスをしながら、時には相手側の意見にショックを受けながら、曲を作り直す(recreate)ことに音楽交流の意義があると強調し、国際交流のメリットとして、・本場の音楽を直接学べる。・音楽の感じ方の違いを知る。・音楽を出発点にして文化を知る。・感情を伴った異文化理解につながる、といった点を挙げた。坂本さんの実践は、海外との交流にメディアを多角的に使用した先駆的な事例として高く評価されている。

 三日目は兵庫県三木市教育センターに移動。日本の音楽教育場面で多く使われている音楽ソフトMusicProの研修(講師はミュージカル・プラン代表の江守幸一さんとアコール音楽教育研究所の小林田鶴子さん)、日韓両国の事例発表などが行われた。

 日本側は、三木市立広野小学校教諭の三枝富誌子さんと、加古郡稲美町立母里小学校教諭の小野万実さんがそれぞれの実践について話した。 (小野さんの前任校、三木市立緑が丘中学校での実践は本連載二〇〇一年七月号に掲載済み)

 広野小学校と韓国の海安小学校との交流は、二〇〇〇年六月から十二月にかけてビデオレターや電子メール、ホームページ、テレビ会議などを使って行われた。この交流の成功のカギは、何と言っても両校の子どもたちが同じソフト(MusicPro日本語版と韓国版)を使って作曲できたこと。使用している音楽ソフトが違うために生じるさまざまなトラブルを回避できたことだ。

 広野小学校の子どもたちは、両国の共通点や相違点を実感することができ、韓国の友だちが一生懸命歌ってくれる姿に感動し、韓国語を勉強したい、実際に会いたいといった気持ちが高まったという。広野小学校が作った海安小学校のホームページは、http://www.miki.ed.jp/inpaku/index.htmを、広野小学校の音楽活動記録「音楽の窓」はhttp://www.miki.ed.jp/hironoel/sub4.htmを参照。前者は、インターネット博覧会(インパク)のホームページ制作コンテストで入賞を果たした。 この日の研修は、韓国の教員たちが日本の名歌「ふるさと」などを演奏し、また三木市の教員たちが韓国の名歌「故郷の春」を合唱して無事終了。
 KCMEは三日間に亘る研修プログラムをすべて終え、大阪城などを見学した後、翌日帰路についた。

 日本と韓国との学校間音楽交流やKCMEの訪日研修は、公的な助成がほとんどない状況下、ミュージカル・プラン、ユーリー・ソフトウェアという企業の尽力で実現できたことを、ここで改めて強調しておきたい。特に教科書問題などで対日感情が悪化し、実現が危ぶまれながらも、小林さんと協力して今回の訪日研修にこぎつけたユーリー・ソフトウェアの美貌の女性社長、ホンさんのエネルギーは本当にすごい。我々音楽教育関係者もその熱意を見習わなければならないと痛感した。

 ホンさんのコーディネートによって、年内には信州大学附属中学校と韓国のテグ市の中学校との間でテレビ会議を使った音楽交流が行われる予定である。ワールドカップの共同開催も実現したことであるし、両国間の音楽授業の交流も今後ますます活発になることを期待しよう。

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